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教育にドリトルを破壊的に導入する[dolittle]

2012-08-19

7/23に行われた「プログラミング・情報教育研究会(プ会)」で、琉球大
教育学部の日熊先生がドリトルを解説してくれました。本質を突いていて
すばらしかったので、筑波大の久野先生が中継してくれたUstreamの録画か
ら要約をメモしておきます。(今日は紹介できませんが、作者の原田さん
によるビスケットの紹介もすばらしいです。ぜひ録画でご覧ください)

プ会: http://pukai.tt.tuat.ac.jp/
当日の録画: http://www.ustream.tv/channel/ykuno

プ会3C@都内某所「ドリトルとビスケット」
2012/07/23(月) 18:00-20:00
・教育にドリトルを破壊的に導入する 日熊隆則(琉球大学)
・プログラミング教育だけじゃないビスケットについて 原田泰徳(NTT)

0.久野先生による話者紹介(04:15頃)
・日熊先生は学生時代に東工大の理学部情報科学科で久野先生の後輩。
・偶然ドリトルを使ってくれていることがわかり、30年ぶりに話してもらうことに。

1.日熊先生による導入(05:45頃)
・機材はiPadからVGA出力。
・教育学部で数学教員を養成している。情報数学の授業でドリトルを利用。
・発表タイトルは「教育にドリトル導入する」を却下されて「破壊的に」を入れた。

2.今日のテーマ(07:55頃)
・教育×破壊的イノベーション(クレイトン・クリステンセン)
・マインドストーム(シーモア・パパート)
-子どもをプログラムしたいのか、子どもにコンピュータをプログラムさせたいのか。
・コンピュータ教育の銀河(戸塚滝登)
-分校での実践。子どもはプログラムをしたい。

3.破壊的イノベーションとは(09:45頃)
・元々は企業経営のイノベーション。
・大企業の成長が限界で終焉し、新興企業が置き換わる。なぜか?
・大企業は持続的なイノベーション(DEC)。価格は10万ドル、用途は会社での研究、ユーザーは研究者。
・新興企業は破壊的なイノベーション(Apple)。価格は800ドル、用途は遊びと趣味、ユーザーは中高生やオタク。
・当初は新興企業の製品は性能の低いおもちゃだが、売れることで飛躍的に性能が伸びる。
・居間に置く高級な真空管ラジオ(RCA)より自分のものにできる安価なトランジスタラジオ(SONY)。
(持続的なイノベーション)
・性能向上は時系列で連続。
・高価。高額なお金を払える消費者がターゲット。
・既存企業の世界。既存の消費者のニーズを聞きながら改良していく。
(破壊的イノベーション)
・当初は低い性能から急激に向上する。
・安価。従来の顧客になれなかった無消費者がターゲット。
・新規参入企業の世界。
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4.教育へのコンピュータ導入(15:30頃)
(持続的なイノベーション)
・ITが使われても変わらない現実。
・キュリー夫人の伝記。娘がウィキペディアで調べながらワープロで宿題。お母さんも20年以上前に百科事典で調べながらタイプライタで宿題。
・ドリトルを学校の先生に紹介すると「数学に使えるね」「技術の先生に相談する」「夢中になって勉強しなくなるのが心配」という反応。持続的なイノベーションの呪縛。

5.数学教育で重視されるもの(18:00頃)
・算数的活動: 児童が目的意識を持って主体的に取り組む算数に関わりのある活動。
・この活動により、授業は次のようになる。
-児童の活動を中心とした主体的なものになる。
-児童にとって楽しいものになる。
-児童にとって分かりやすいものになる。
-児童にとって感動的なものになる。
-創造的、発展的なものになる。
・ふと考えると、ドリトルだとほっといてもそうなる!

6.持続的なイノベーションの象徴的なアイテム(20:00頃)
・電子黒板: 学校に行くと必ずあって、誰も使いこなしていない。
・電子黒板を使う授業でのできごと。
-普通の学生は、電子黒板を板書の代りに利用。(持続的イノベーション)
-ドリトルを使える学生は、画面をタッチしながら動かす巨大ゲーム版。(破壊的イノベーション)
・電子「黒板」という名前で従来に縛られてしまう。持続的イノベーションの呪縛。

7.プログラミングを教科教育の道具から開放しよう(22:40頃)
・ドリトルを「遊び」「玩具」「プログラム言語」として、破壊的に導入しよう!
・使っていて感じるドリトルの効果:
「楽しい」「驚き」「達成感」「熟考する」「自然に数学・理科を必要とする」
→ ドリトルには、なにかを呼び覚ます力がある

8.タートルグラフィックスでの実例(23:45頃)
・繰り返しで正方形の例を示す。
・正三角形を描かせる。実行は1回のみ。99%の生徒は閉じない三角形になる。
・60度という内角を使った自分から、120度という外角を使うカメの気持ちになる。
・118度にすると違う図形になる。角度や歩幅を少しずつずらすとすごい図形になる。
・子どもたちの知的な好奇心を呼び覚ます。
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9.子どもたちの実例(27:00頃)
・学校に来るのが辛い別室登校の中学生が土曜日のドリトル教室に進んで参加。
・不登校の小学生が父親の職場で大学生のドリトル授業に参加したことがきっかけで、
現在は高専に進学し、各種コンテストに参加。「CやPythonなどを学ぶ上で
ドリトルは他の言語を勉強するときに邪魔をしない」と感想。
・文化系の高校生。数学は苦手だがドリトルを通して数学に興味。

10.学生の卒研紹介(32:30頃)
・ソニーのゲームは持続的イノベーション。プレイステーションを1,2,3と高性能化。
-「10,20代の男性」のオタクが消費者。
・任天堂はファミコンを64まで高性能化したところで、DSやWiiに転換。(破壊的イノベーション)
-「10,20代の男性」を含む、すべての男性女性が対象。
・持続的イノベーションの限界。成功した製品に目を奪われて他の顧客を見られない。
・教育も同じ。
-消費者: 学習内容が理解できる。
-無消費者: 学習内容が理解できない。興味がわかない。
・従来のコンピュータの使われ方:(持続的イノベーション)
-コンピュータで子どもをプログラムする。
-教科を分かりやすく(面白く)教えるために使う。
-調べ学習に使う。
-受動的学習。
-コンピュータが使われ、電子黒板が使われても、大きな進化はない。
・パパートの理想:(破壊的イノベーション)
-子どもがコンピュータをプログラムする。
-その過程で必要となる科学を学び、科学と密接な関係を確立する。
-能動的学習。
-コンピュータを破壊的に導入すると、飛躍的な進化の可能性がある。ドリトルの可能性。
・ドリトルは「日本語」「視覚的」「オブジェクト指向」が特徴。
-情報系の学生がドリトルを学ぶと、「Javaでわからなかったオブジェクト指向が理解てきた」という感想。
・数学の先生の悩み: 「なんで数学を勉強しなくちゃいかないの?」
-そんな疑問が生まれなければいい。
-ドリトルで関数(規則)や座標などの必要性は疑問に思わない。
・ドリトルは答を中に持つ。
-数学の文章題: 正解は回答集にある。方程式に代入して検算せず、解答と違っていたら全部消してやり直す。
-ドリトルのプログラム: 正解は自分にある。意図した動きと違っていたら自分のプログラムを消さずに向きあって考える。(デバッグ)
・「正方形って何?」と言うレベルの子どもにドリトルを教えると、正方形の後に正三角形を描かせると、60度でなく100度以上の角度を指定する。単なる数でなく角度の概念を理解している!

11.まとめと質疑(47:00頃)
・「プログラムの教育」や「数学に役に立つ」などはどうでもよくて、
「本質的な何かを子どもたちから引き出す」ために「破壊的に導入してみたらどうでしょう」。

Q: 沖縄にドリトル支部があるのは知らなかった。ドリトルを使ってもつまらない授業は可能。それを避けるには。
A: 教える目的を変えればよい。「ドリトルを教える」「プログラムを理解するために教える」はダメ。
「ソーティングをわかりやすく教える」などと考えると従来と同じ。遊びとして扱うことが大切。

Q: ドリトルには「タートルグラフィックス」「オブジェクト指向」「日本語」などの特徴があるが、それぞれどのような効果があるか。
A: タートルグラフィックスは結果が視覚的にフィードバックされるのがよい。
日本語は誰でも意味がわかるのは大きい。
子どもはコントロール感が大事。ボタンでの操作は大きい。歓声が上がる。コントロールされる人生からの逸脱。

Q: 高校生だが自分も間違っていたら消していた。確かにプログラムは消したくない。その通りと思った。
A: 現役の生徒さんからの感想をありがとう。

Q: 高校教員。授業でゲームを作ることは可能か。
A: 授業で使えるのは1時間から3時間だと思う。
1時間目に角度を変えて楽しみ、2,3時間目にピンポンゲームを作らせることは可能。
2時間目には、わざと間違えを見せながら、ひな形の例を実演する。ボタンとラケットと跳ね返り程度。途中まで見せれば自分で完成させたくなる。
自分でわかって何かやることが重要。数学は理解して何かをするよりは、やり方を習ってその通りに作業することが中心になってしまう。
大学では半年かけてのんびり授業で使っている。最後は作品作りと発表会。

Q: 生徒の進度差をどうすればよいか。
A: 理解の早い生徒用に応用問題を用意しておく。勝手に難しいことをやらせるとよい。

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